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旅の道草(甲賀流・忍術の里へ)
元亀元年五月十九日、君ヶ畑千種峠での大仕事。織田信長は天下取りの野心達成のために、今までの宗教・天台宗を潰し、新しく伝来した基督教を布教する政策を取った。それを察知した杉谷善住坊は激しく反発し、信長暗殺を企てた。その策略に加担した吾は、狙撃を終え、兎も角一矢を報いて亀山から加太を経て柘植を回り命からがら逃げ延び、およそ四か月ぶりに塩野に戻って来た。新しく石で作り直された風呂と五右衛門風呂に浸かる。山中を走り回り、全身に負った擦り傷に湯が沁み気持ちが良い。露天を照らす十六夜の月が明るい。故郷の湯は肌に優しく長旅の疲れを癒してくれる。塩分を含んだ風呂の湯は良く暖まり、胃腸・傷・婦人病などに効果があるという。湯冷めしないのが良い。風呂上がり、親を囲み、地酒、新米、秋茄子の田楽などの郷土料理に舌鼓を打ちながら、日頃の苦労に感謝である。 小杣路村・邦泉
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